さて、プリンターや複合機などを使っている方は、インク代の高さや、その交換の手間が煩わしく感じることも多いでしょう。
しかし、最近はプリンターにインクのタンクを搭載した機種が登場し、インク代が安く済んだり、その交換頻度が極端に減らせるなど、とても便利に進化しました。
私は、エプソンのエコタンク搭載モデル「EW-M634T」を購入し、非常に使い勝手が良かったので、その紹介をしたいと思います。
カートリッジ方式はインク代が高い
今まで主流だったプリンターは「カートリッジ方式」と呼ばれるもので、インクがなくなると、インクカートリッジごと交換する必要がありました。
「カートリッジ」とは、容易に着脱できる交換可能な部品のことで、ファミコンなどのROMカートリッジ、銃器などの弾薬カートリッジなどがあります。
インクカートリッジは、プラスチックケースの中にインクが充填されていますが、ケース自体の大きさがあるため、必然的に中のインク容量が少なくなってしまいます。
▲インクカートリッジ
そのため、カラー印刷を数回しただけで、カートリッジ内のインクがかなり減ってしまい、すぐに交換する必要が出てきてしまうのです。
インクカートリッジの値段は、外のインクケース、中に充填されたインク、ICチップも備わっていますから、それらの料金が加わったものになります。
特に、純正のインクカートリッジはかなり高額で、全色セットを2セット買っただけで、プリンター本体の代金より高額になってしまう場合があるほどです。
ネットで売っている互換性のインクを使えばインク代は安く済みますが、ICチップの不具合でプリンターがインクを認識しない場合も多く、使い物にならない時もあります。
カートリッジ方式はインクの交換の手間が多い
また、カートリッジ方式のプリンターは、ケース内のインク容量が少ないため、必然的にインクを交換する回数が多ります。
特に、プリンタノズルのヘッドクリーニングをする際は、大量のインクを使用します。
そのため、1回ヘッドクリーニングをするだけで、2,3個のインクカートリッジを交換する羽目になったりします。
▲カートリッジ式はインクを1つずつ交換する必要がある
そして、カートリッジ式は、なくなった色のインクを一つ一つ交換していく必要があるため、インクの交換回数が多くなります
また、カートリッジ式は、インクの交換の際、どうしても手が汚れてしまうことも多く、これも厄介です。
エコタンク・ギガタンク搭載モデルの登場
2020年頃から、新型コロナの流行と共にテレワークが浸透し、自宅でプリンターを使う機会が増え、プリンターメーカー各社は大容量のインクタンクを搭載した機種の発売に力を入れました。
エプソンでは「エコタンク」として、キャノンでは「ギガタンク」として、当初は業務用がメインだった機種を、2020年頃から一般向けにラインナップを強化し始めました。
私も、今まではエプソンの「EP-808AW」というカートリッジタイプのプリンターを使用していましたが、印刷のスレも多かったため、今回、エコタンク搭載モデルの「EW-M634T」に買い替えることにしました。
▲今回購入したエプソン複合機「EW-M634TW」
プリンターの価格自体は「EP-808AW」が2016年に13,500円ほどで購入しましたが、「EW-M634TW」は2024年に35,000円で購入し、かなり割高になってしまいました。
ただ、近年の物価上昇もあり、2023年のインクカートリッジ式である「EP-884AW」が26,000円ほどなので、一概にエコタンク搭載モデルが高いとは言えないでしょう。
なにより、インク代がほとんどかからないので、割高な分の本体代金はやがて元が取れてしまいます。
エコタンク方式の特徴
エコタンク搭載のプリンターの特徴としては、インクの交換がカートリッジ式ではなく、インクがそのまま入ったボトルのため、中のインク容量が非常に多いことが挙げられます。
カートリッジ式の中のインク容量は、エプソンの場合では非公表の場合が多く、一概には比較できませんが、相当内容量に違いがあると思われます。
そして、エコタンク式は、一度に多くのインク容量を補充できるため、インクを補充する機会自体が大幅に減ることになるのです。
更に、一つのインクが減った段階で、そのインクだけでなく、他のインクもまとめて満タンまで補充することができるので、5色インクだと5回分のインク交換がたった1回でできるのです。
この、インクの手間が全くかからなくなることが、エコタンク方式の一番の利点と言っていいでしょう。
▲インクを5色、順番にまとめて補充できる
また、エコタンク用のインクにも互換性インクがありますが、カートリッジ式の互換性インクと異なり、ICチップがある訳ではないので、読み取りエラーなども起こりません。
また、インク補充時にもカートリッジ式と違って、手が汚れるようなことはほとんどありません。
ただ、注意したいのが、一度開封したインクボトルを横に寝かして保存するとこぼれることがあるので、立てて保存しましょう。
エコタンク搭載モデルの利点
・インクがほとんど減らない
・インク代がかなり安い
・インクを全色まとめて交換できる
・インク補充時に手が汚れにくい
・互換性インクでもエラーが起こらない
・廃インクタンクも自分で交換できる
エコタンク搭載モデルの欠点
・本体が少し高額である
・デザインが少しダサい
また、これはエコタンク方式だけではありませんが、近年のプリンターは廃インクタンクも自分で交換できるようになっています。
今までは、この廃インクタンクをエプソンなどのメーカーに直接頼む必要があり、非常に手間と時間、お金がかかりましたが、これを自分で交換できるとなると圧倒的に楽になります。
一方、エコタンク搭載モデルの欠点としては、本体が少し高額であるということですが、これはインク代が安く済む面ですぐに元が取れるでしょう。
また、人によって好みが分かれますが、個人的にはデザインが多少ダサくなったと感じます。用紙トレイの用紙ガイドなんかは簡素になってしまい、格好悪く感じます。
メンテナンスボックスの実装
さて、昔はプリンターの廃インクを吸収する「廃インク吸収パッド」がいっぱいになると、自分では対応できず、メーカーに持参するなり郵送するなりするなりして交換する必要がありました。
私の場合は、2007年に日野のエプソン工場までプリンター本体を持っていき、定額8400円のところ、持ち込み割引で1050円引きとなり、7350円で交換してもらいました。
その後、2011年にはその交換費用は4200円と安くなり、持ち込み割引1050円を入れると、3150円で交換することができました。
その後は、ネットで廃インクリセットツールなどを950円ほどで購入し、プリンターをネットに繋いでカウンターを言セットし、吸収パッドは自分で詰め物などをして交換しました。
このように、廃インク吸収パッドの交換は手間と時間がかなりかかりました。
しかし、最近は、メンテナンスボックスを購入して交換するだけでいいという、非常に楽な方法になりました。
実際にインクはどれくらい持つのか
私の場合、仕事でプリンターを使用することも多いのですが、写真などのカラー印刷は全くなく、文字多めのカラー印刷やコピーを主に1日平均する5枚程度するくらいです。
「EW-M754TW」の本体に最初から付属していたセットアップ用インクボトルは使い切りタイプの15mlのため容量が少ないですが、私はこのインクで半年近く使用できました。
次に買ったのが、互換性インクの大容量タイプ45m×5色セットが1,900円ほどで、本体に注入したら1/3ほどしか減らなかったので、本体にはやはり15mlほどしか入らないようです。
1回の注入15mlでやはり半年持つため、この大容量タイプ45ml×5色セットで1年半は持ちそうです。この大容量タイプを2セット買ったため、3年はインクを買う必要がなくなりました。
▲左が大容量タイプの互換性インク45ml×5色、右がセットアップ用インク15ml×5色
互換性インクなので、インク代がそもそも安いですが、年間にするとインク代は1,900円×2/3の、1,267円ほどの計算になります。
しかも、交換の手間は半年に1回だけで済むので非常に楽です。
純正インクだと45mlの大容量タイプ5色セットで10,000円ほどするので、年間では×2/3で6,667円ほどの計算になります。
カートリッジ方式 | エコタンク方式 | |
互換性インク | 3,541円 | 1,267円 |
純正インク | 17,705円 | 6,667円 |
インクの交換回数 | 21回 | 2回 |
▲私の場合の年間インク代
ちなみに、今までのカートリッジタイプのプリンターは7年間使用しましたが、互換性インクを使っていて、年間にすると3,541円だったので、今までのインク代が64%ほども安くなりました。
カートリッジタイプの純正インクを使っていたとすると、互換性の5倍ほどの値段がするので、純正インクだと17,705円ほどかかっていると思われ、エコタンクにすることで11,038円ほど安くなります。
そして、何より一番楽なのが、インクの交換回数が圧倒的に減ったことです。
カートリッジ方式の時は、印刷するたびに何かしらのインクを交換していたイメージでしたが、エコタンク方式に代わって、全くと言っていいほど交換しなくなりました。
エコタンクの機種は何を選ぶか
というところで、エコタンク搭載機種は非常にお勧めのプリンターですが、エプソンのエコタンクの機種を選ぶとすると、どの機種を選ぶといいのでしょうか。
「EW-M9973A3T」や「EW-M873T」は、6色独立インクを備え高画質の写真をプリントできるプロフェッショナル向けのため、少し本体が高額です。
「EW-M5610FT」や「EW-M634T」は、4色独立インクを備え、画像の解像度は低めですが、インクコストが非常に安く、本体が大きめのビジネスモデル向けです。
一方、「EW-M754TW/TB」や「EP-M553T」などは一般家庭向けで、プリントの解像度の高さとインクコストの安さを兼ね備えています。
特に、「EW-M754TW/TB」は液晶モニターも大きく、前面と背面給紙両方に対応し、自動両面プリントも対応していて、デザイン的にも十分です。
「EP-M553T」や「EP-M476T」は、本体価格が安いものの、前面給紙に対応しておらず、自動両面プリントもなく、タッチパネル式ではないなど、少々機能が絞られています。
エプソンは「迷ったらこれ!」と「EW-M754TW/TB」を勧めていますが、その通り、間違いなく迷ったらコレでしょう。
エコタンク方式(複合機) | |||||||
プロフェッショナル向け | ビジネス向け | 家庭用向け | |||||
EW-M973A3T | EW-M873T | EW-M5610FT | EW-M634T | EW-M754TW/TB | EP-M553T | EP-M476T | |
実売価格 | 79,000円 | 56,000円 | 68,000円 | 37,000円 | 36,000円 | 28,000円 | |
発売日 | 2021年2月 | 2020年12月 | 2020年7月 | 2021年11月 | 2021年11月 | 2021年2月 | 2023年11月 |
A4カラー文書インクコスト | 約1.8円 | 約1.8円 | 約1.0円 | 約1.0円 | 約3.0円 | 約3.0円 | 約0.8円 |
最高解像度 | 5,760×1,440 | 5,760×1,440 | 4,800×1,200 | 4,800×1,200 | 5,760×1,440 | 5,760×1,440 | 5,760×1,440 |
メンテナンスボックス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
液晶モニター | 4.3型 タッチパネル | 4.3型 タッチパネル | 2.7型 | 2.4型 | 4.3型 タッチパネル | 1.44型 | 1.44型 |
▲エプソンのエコタンク方式のモデルの比較
まとめ
もし、あなたがプリンターに純正インクを使用している方だと、エコタンク方式のプリンターに帰ることで、インク代がかなり安くなります。
互換性インクを使用している方だと、元々のインク代が安いので、それほどインク代に差はできませんが、正直そんなことより、エコタンク方式だとインクの交換の手間が全くなくなることが一番の利点だと感じます。
これを機にエコタンク方式のプリンターに買い替えてみてはどうでしょう。