医療費

傷病手当金とは?病気やケガで会社を休んだ時、給料の2/3が支給される制度!

突然、病気やケガをして働けなくなった時って困りますよね?

そんな方のために、健康保険には傷病手当金という給料の2/3が保障される制度があります。略して傷手(しょうて)と呼びます。

東京都の調査では、この傷病手当金の制度を知らなかった人が40%にも及んだそうです。健康保険料を支払っているのに、こんな大事な制度を利用しないのはもったいないです!

私も体調不良で会社を長期に休むことになり、実際に利用させていただきました。

私の実体験も含めて、少々ややこしい傷病手当金について分かりやすく説明したいと思います。

 傷病手当金って何?

病気やケガで仕事を休まざるを得なくなってしまった人の生活を保障するため、健康保険組合などが、その人のお給料の2/3を支給してくれる制度です。

会社員が加入する健康保険(健康保険組合、協会けんぽ)、公務員が加入する共済組合、船員が加入する船員健保、個人事業所などの国保組合ともにこの制度が設けられています。

ただ、自営業や退職者などが加入する国民健康保険、75歳以上の後期高齢者医療制度は、傷病手当金の制度は任意となっていて、基本的にもらえません。

 傷病手当金をもらえる条件

傷病手当金はもらえる条件があります。

  1. 仕事中ではない病気やケガの治療のためであること。
  2. 病気や怪我のために働けないこと。
  3. 4日以上仕事を休んでいること。
  4. 給料がもらえないこと。

1、仕事中や通勤途中での事故は労災保険の対象となるので、傷病手当金の対象にはなりません。また、必ずしも入院する必要はなく、自宅療養していたももらえます。

2、傷病手当金の申請の時は、基本的に医師に「労務不能である」と証明してもらう必要があるので、病院で診察を受けることになります。その医師の意見を参考にして、保険者である健康保険組合などが支給するかどうかを判断します。

3、仕事を休んで最初の3日間(土日祝日、有給休暇日も含む)は待期期間と言って、支給対象期間にはなりません。4日目からの休みに対して支給され、初日が早退の日は待期期間に含まれます。ただ、共済保険は土日は待期期間に含まれません。

4、仕事に就けずに給料がもらえないことによる生活保障の制度なので、有給などで給料が出ている時は支給されません。給料があっても傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給されます。

 傷病手当金をもらう方法

傷病手当金は自動では支給されず、自分で手続きをする必要があります。ただ、上の要件を満たせば、健康保険組合などは必ず傷病手当金を支給しなければなりません。

支給要件を見てしているのに、会社が対応してくれない場合は違反になります。

傷病手当金をもらう方法は、傷病手当金の申請用紙を会社や健康保険組合などから手に入れ、必要事項を記入して、医師の診察を受けて「労務不能の証明」をもらい、会社に提出して、健康保険組合などに送られます。

傷病手当金の申請用紙には、私たちが記入する欄、医師が記入する欄、会社が記入する欄があります。申請用紙は1枚だけで済んだり、2~4枚程度に分かれている場合もあるようです。

ケガの場合、「負傷原因届」、そのケガの原因が第三者の場合は「第三者行為による傷病届」が追加で必要になります。

傷病手当金の申請用紙は、健康保険組合などでは主に傷病手当金請求書、協会けんぽでは傷病手当金支給申請書などと呼ばれますが、傷病手当金請求書の方が多いような気がしますので、それで統一したいと思います。

 傷病手当金の金額は給料の2/3

 

1日につき

直近の連続した1年間の標準報酬月額平均額÷30×2/3

つまり、お給料の2/3がもらえるということです。仕事を休むのは1日単位ですので、傷病手当金も1日単位で計算します。

もらっていたお給料からは少し減りますが、働いていないのにもらえるお金なので、だいぶ助かります!

 傷病手当金をもらえる期間

3日間待期期間を過ぎた、4日目のから最長で1年6ケ月後までもらえます。

もし、体調がよくなり復職することになっても、同じ症状が原因で再度休職する場合は、支給期間が後ずらしにされることはなく、最初の支給開始日から1年6ヶ月後までは変わりません。

 傷病手当金をもらっている最中に別の症状が出た

傷病手当金をもらっている途中で、今の症状とはまったく関連性のない別の症状が出た場合もあるかと思います。

その後発の症状が原因でまだ働けないのなら、後発の症状が出た日から4日後が新たな傷病手当金の支給開始日になり、そこから1年6ヶ月後まで支給が伸びます!

後発の症状が現在の症状と関連性のある場合は、現在の症状としての傷病手当金だけで、新たな傷病手当金は認められません。

そして、後発の症状が出たとしても、現在もらっている傷病手当金と二重にもらえるわけではなく、傷病手当金をもらえる期間が延びるだけです。

まぁ、そんなに伸ばしたら会社から解雇されるリスクもありますし、会社によっては休職期間は2年までと決まっているところもありますので、難しいところですが。

 手続きは毎月行う

1ヶ月以上仕事を休む場合、傷病手当金請求の手続きは、基本的にひと月ごとに行います。毎月ごとに傷病手当金請求書を用意し、医師の証明をもらって、会社を経由して健康保険組合などに請求します。

医師の証明をもらうには、医師の診察を受けないといけませんので、毎月、最低1回は病院に通うことになりますので、少々手間です。

「貯金がたくさんあるから2ケ月にまとめて請求すればいいや」というものではないそうですので、注意してください。

もし、月に1回医師の診察がない場合は、「療養状況報告書」などを健康保険組合などに提出することになります。

 出産手当金が同時に受けられるとき

傷病手当金と出産手当金はどちらも生活保障の意味で支給されますので、両方を同時もらうことはできません。

もし、妊婦さんで両方同時にもらえる権利がある場合は、出産手当金の支給が優先されます。

ただ、出産手当金の金額が傷病手当金の金額より少ない時は、その差額分の傷病手当金がもらえます。つまり、出産手当金か傷病手当金のどちらか多い方がもらえるという意味合いになります。

 障害年金と同時にもらうこともできる

障害年金は働いていてももらえますが、傷病手当金ももらえる権利が生まれた場合は、障害年金が優先されます。

ただ、障害年金の金額が傷病手当金の金額より少ない場合は、その差額分の傷病手当金がもらえます。つまり、障害年金と傷病手当金のどちらか多い方がもらえるという意味合いになります。

障害年金と傷病手当金の金額を比べる場合は、障害年金の年額を360で割って1日当たりの金額を出します。計算上は、そのどちらか多い方がもらえることになります。

傷病手当金は1年6ヶ月経つともらえなくなってしまいますが、障害年金は障害が治らない限りもらえますので、安心ですね。

 途中で退職してももらえる

仕事を休んで傷病手当金をもらっている間に、復職せずにそのまま退職してしまった場合、2つの条件を満たしていれば退職後も継続して傷病手当金を受け取れます!

  1. 1年以上の保健加入期間がある
  2. 退職時に傷病手当金をもらっている
  3. 退職日に休んでいる
  4. 退職後に働いていない

つまり、1年以上健康保険に加入していて、退職する時に傷病手当金をもらっているなら、引き続き傷病手当金をもらい続けられるのです!

そのため、保険加入期間が1年未満で退職した場合は、傷病手当金の支給が打ち切られてしまいます。

傷病手当金を受け取っている最中も保険加入期間に含まれますから、退職を考えている場合、加入期間が1年経ってから退職するようにすれば、以降も傷病手当金を受給できます。

保険加入期間は、健康保険組合が変わっていても期間は通算されますが、任意継続保健期間、国民健康保険、共済組合は通算されません。

また、会社を3日間休んでそのまま退職した場合は、その3日間は待期期間となって、傷病手当金を受け取っていないので、退職後も受給できなくなってしまいます。

会社を4日間休んでそのまま退職した場合は、1日だけ傷病手当金を受け取れているので、以後1年6ヶ月間は受け取れる権利を得ます!

たった1日で雲泥の差です!もし会社を辞めるなら4日経ってから退職届を出すなど、傷病手当金をもらえる条件をそろえておきましょう!(笑)

また、退職日は会社に顔を出すのはいいですが、出勤扱いにしないことです。出勤扱いとなると、その後の受給権利をすべて失ってしまいます。

そして、退職後に軽いバイトなどで1日でも働いてしまうと「労務可能」と判断され、以降の傷病手当金が支給されなくなってしまいます。静かに休んでおきましょう!

 失業給付(失業保険)はもらえない

仕事を辞めても傷病手当金をもらっている間は、失業給付の方はもらえません

失業給付がもらえるのは、退職した日の翌日から1年間のため、傷病手当金をもらっている途中で失業給付をもらえる権利がなくなってしまう場合があります。

そんな時は、ハローワークで延長手続きをしておけば、失業給付の受給を最長4年間延長できます。

 傷病手当金を請求する時効は2年

傷病手当金をもらえる権利は年で時効になります。傷病手当金は1日単位で計算されるため、時効も1日単位で成立していきます。

ただ、仕事を休むことになったら、すぐに手続きをすると思うので、あまり考えなくていいと思いますが、もし傷病手当金をもらえる権利があるのに、その制度を知らなかった方は急いで手続きしましょう。

 傷病手当金付加金、延長傷病手当付加金

健保組合などによっては、在職中の方に限って、傷病手当金に上乗せされる傷病手当金付加金や、傷病手当金の支給期間が過ぎた1年6ヶ月後ももらえる延長傷病手当金(延長傷病手当付加金)が追加されるところもあるようです。

延長傷病手当金は、傷病手当金終了から6ヶ月間の間もらえます。

大企業では取り入れられているところが多いようです。私の会社は小さかったので、付加金はもらえませんでした。

 保険料は免除されない

傷病手当金をもらっている最中でも、社会保険料や税金は免除されません。

健康保険組合などから会社に傷病手当金が振り込まれ、会社で社会保険料や税金が引かれ、私たちの口座に振り込まれることになります。

 1年6ヶ月以上経っても治らない場合

症状がなかなかよくならず、傷病手当金の打ち切りの1年6ヶ月経っても治らない場合、障害年金を受けられるかもしれないので、検討してみるのもいいかもしれません。

障害基礎年金と障害厚生年金のうち、2階建て部分の障害厚生年金の部分は、厚生年金の加入中に初診日があればもらえるので、傷病手当金を受け取っているなら医師の診察を受けているはずで問題ありません。

▼傷病手当金の請求の流れはこちらから

【実体験】傷病手当金の請求の流れを解説!医師の「労務不能と認めた期間」と会社の「給与計算期間」の関係など! もし、突然、病気やケガをして働けなくなった方のために、健康保険には「傷病手当金」という、給料の2/3を補助してくれる制度があります。 ...

 まとめ

このように、病気やケガで休職せざるを得なくなっても、給料の2/3を保障してくれる素晴らしい制度です。

ただ、退職時はちょっと間違うと、1年6ヶ月もらえる傷病手当金の受給資格を失ってしまいますので、注意しましょう。