さて、激安賃貸住宅として名高いビレッジハウスですが、家賃が安いということはそれだけ欠点も多い住宅だと考える方も多いでしょう。
そこで、実際にビレッジハウスに住んで3年経つ私が、その欠点や意外な利点などを踏まえて紹介したいと思います。
地震や火事に強い
ビレッジハウスは、築年数が40~50年であり、1981年以前の建物ですので、建築基準法の旧耐震制度に当てはまります。
そのため、新耐震基準で建てられた現在の建築物よりは耐震面で劣りますが、元々強度面では優れている鉄筋コンクリート造です。
鉄筋コンクリート造は、引っ張る力に強い鉄筋と、圧縮力に強いコンクリートを一体化させて作られるため、この面では耐震性に優れているといえるでしょう。
また、コンクリートは長時間炎にさらされても強度が下がらず、非常に燃えにくい素材です。
そのため、火事に非常に強く、たとえ隣や上下階の部屋が燃えたとしても、自分の部屋まで壊滅的な状況になることはあまり多くないと考えられます。
隣人の生活音が全くしない
また、鉄筋コンクリート造は、コンクリートを流し込んで作られるので、必然的に壁が厚くなり、また壁に隙間が少なく、音が通りにくくなります。
そのため、遮音性に優れていて、隣の部屋の物音や人の話し声などは驚くほど聞こえません。
自分の部屋のベランダ側の窓を開けていて、隣の部屋の人が同じくベランダ側の窓を開けると、ようやく音が聞こえ、隣の人がいたんだと初めて気付かされるレベルです。
また、ビレッジハウスの物件によっては、隣との部屋に必ず押し入れがあるため、物理的に聞こえにくい間取りになっている場合も多いです。
古い物件の特徴としては、壁が薄く隣人の生活音が聞こえてくることが多いですが、ビレッジハウスはそのようなことはほとんどないので、とても快適に過ごせるでしょう。
間取りが広く収納が多い
ビレッジハウスの前身である雇用促進住宅は、単身者ではなく、ファミリー向けに作られたものですから、ワンルームは少なく、2K、2DK、3DKという部屋が多くなっています。
そのため、和室と洋室など、部屋が複数あり、キッチンもある程度のスペースがあり、バルコニーもある程度ゆったりとしたスペースがある場合がほとんどです。
他のワンルーム物件などではベランダがなかったり、あっても極小の面積だったりして、洗濯物が風で飛ばされて道路まで取りに行くようなこともあります。
しかし、ビレッジハウスなら洗濯物などをゆったりと干すことができますし、バルコニーでガーデニングをしている方も多く見られます。
また、バス・トイレは別のため使いやすく、玄関にもシューズボックスが供えられていたりと、設備もそれなりに整っています。

▲ある程度ゆったりとしたバルコニー
また、収納は非常に多い場合がほとんどで、使い切れないほどです。収納は隣の部屋との間に設けられている場合も多く、隣人の生活音を減らすことに一躍買っています。
ふるまの高さが低い
さて、ここからはビレッジハウスの欠点ですが、部屋を仕切るふすまの高さが低いということが挙げられます。
日本人の平均身長は、食生活の欧米化などさまざまな要因で伸び続けていて、今現在の平均身長は30代男性だと173㎝程度、女性だと158㎝程度です。
40~50年前の日本人の30代男性の平均身長は167㎝程度と今よりも10㎝低く、当時に建てられたビレッジハウスの部屋を区切るふすまの高さも、当時の平均身長に合わせて設計されています。
私が住むビレッジハウスでは、ふすまの高さが177㎝程度しかなく、トイレのドアに至っては172㎝、玄関でも178㎝程度の高さしかありません。

▲ふすまの高さが低い
自分の身長が177㎝なくても、歩くときは一時的につま先立ちになるため、頭の高さが数センチ高くなり、たとえ身長が175㎝程度だとしてもこの高さでは頭がぶつかる場合があります。
身長が175㎝より高い方や、高身長の外国人などは、部屋を移動するたびに頭をかがめる必要があり、少し不便に感じるかもしれません。
ただ、逆に言えば、身長が170㎝程度以下の方は何の問題もありません。
照明が備わっていない
ビレッジハウスは、普通のアパートやマンションなら初めから設置されていることが多い、照明(ライト)が備わっていません。
現在の一般的な部屋には、壁に照明のスイッチが備わっていて、部屋に入る前に壁のスイッチを入れて部屋を明るくすると思います。
しかし、昔の部屋は照明のスイッチが壁に備えられている訳ではなく、照明自体に紐を引くようなスイッチが付いていたので、ビレッジハウスの壁にもそのスイッチ自体がない場合が多いのです。
そのため、照明は自分で購入して設置することになりますが、別の言い方をすれば自分の使いたい照明を選べるということです。

▲照明は取り付けられていない
ビレッジハウスと契約すると使える3万円分のキャッシュバックで、シーリングライトとカーテンのセットを選べば、入居時にシーリングライトを用意してくれます。
しかし、その場合は自分で照明の種類やカーテンのデザインを選ぶことはできないので、3万円分は家賃のキャッシュバックに充てて、照明やカーテンは自分で購入するのもありでしょう。
照明は、明るさを調節できる調光機能と、色合いを調整できる調色機能を兼ね備えたものだと、就寝前に蛍光色にして明るさを落とすことで、スマートな入眠に繋げられます。

ガスコンロ(IHクッキングヒーター)もない
アパートを借りると、ガスコンロやIHクッキングヒーターなどが備わっていない物件は結構ありますが、もちろんビレッジハウスもありません。
そのため、自分で調理をしたい場合、ガスコンロなどを自分で購入することになりますが、キッチン台にコンセントが備わっていることが多いので、IHクッキングヒーターにしてもいいでしょう。

▲ガスコンロなどは備わっていない
むしろ、ガスコンロよりIHクッキングヒーターの方が経済的にも、安全性や掃除の面においても使い勝手はいいので、私はIHクッキングヒーターにしました。
ガスコンロの方が使いやすいという方は、ガスコンロにしてみてもいいでしょう。


一部の部屋に網戸がない
築年数の古い物件によくあることですが、ビレッジハウスには網戸が設置されていない部屋がある場合が多いです。
私の住んでいるビレッジハウスでは、和室に網戸は取り付けてありましたが、洋室とお風呂場の窓には網戸がありませんでした。
サッシ部分に網戸用のレール自体がないのです。

▲洋室に網戸がない
特に、お風呂場は除湿のために窓を開けたいのですが、開けっ放しにしているとよく虫が入ってくるので、それが嫌で自分で網戸を設置しました。
自作では、開け閉めできる一般的な網戸は難しいので、開け閉めのできない網戸になってしまいましたが、背に腹は代えられません。
網戸が最初から設置されていないというのは、かなり大きな欠点だといえるでしょう。
夏は暑くて冬は寒い
鉄筋コンクリート造は、一般的な木造建築と比べると、熱伝導率が高く、断熱性が低いという特徴があります。
「熱伝導率が高い」とは、熱を伝えやすいという意味で、夏場は日の光で鉄筋が温められて熱を持ち、冬場は鉄筋が外気によって冷やされ、冷気を発することになります。
鉄筋で囲われた室内は、鉄筋の温度に大きく左右されることになり、夏は鉄筋が熱くなって室内も暑くなり、冬は鉄筋が冷やされて室内も寒くなるのです。
また、古い住宅は、壁や床下天井裏に断熱材を敷き詰めていなかったり、その量が不十分だったりするため、これも外気の温度が室内に伝わりやすい原因になります。
一方、最近の住宅は窓ガラスがペアガラスでサッシは樹脂製と断熱効果が高くなっていますが、築年数が古いビレッジハウスはもちろん窓ガラスは1枚で、サッシはアルミ製です。
ガラスは熱伝導率が低いものの、熱さが薄いため熱を簡単に伝えやすく、アルミは熱伝導率が非常に高いという特徴があります。
つまり、薄い1枚ガラスとアルミサッシは、鉄筋と同じように外気の温度を室内にそのまま伝え、夏は暑く、冬は寒くなってしまうのです。
また、昔の住宅は今のように気密性に力を入れていなかったため、窓などに隙間が多いため、隙間風が入りやすく、室内の温度が外気に影響されやすくなっています。
これらの原因で、ビレッジハウスは夏は暑く、冬は寒くなりやすいのです。
調湿効果がない
「調湿効果がない」とは、室内の湿度を調整する機能を持たないという意味です。
木材というものは、水分を吸収したり、放出したりする機能を持ちます。
そのため、床や壁、天井が木でできている木造建築は、湿度が高いと木材が水分を吸収し、逆に湿度が低いと水分を放出して、室内の湿度を一定に保つ効果があります。
しかし、鉄筋コンクリート造の場合は木がほとんど使われていないため、そのような調湿効果がなく、雨の日などは外気の影響をそのまま反映して湿度が上がりやすくなります。
この辺りは鉄筋コンクリート造の欠点といえるでしょう。
この対策としては、エアコンの除湿機能を利用したり、調湿効果を持つ天然の井草のカーペットなどを敷くなどの方法もあります。

エレベーターがない
ビレッジハウスは、4階建てや5階建ての建物もありますが、それらにはエレベーターはついておらず、階段で上り下りすることになります。
一般的なマンションの場合、高層階ほど眺望の良さや防犯上の面から家賃が安くなる傾向がありますが、ビレッジハウスはその逆です。
エレベーターがないため、高層階ほど登り降りに不便であり、家賃が低い傾向があり、逆に低層階はそこを希望する高齢者が多いため、家賃が高く設定されています。
逆に言えば、足腰に問題がないのならば、高層階の方が眺望の良さや防犯面で優れていて、さらに家賃が安く、普段の生活で足腰も鍛えられるので一石二鳥も三鳥もあるでしょう。
ただし、引っ越しを自分でしようとしたり、重いものを買ってきたり、体調の悪い時の場合は、4階や5階まで階段で登るのはつらい時もあります。
その他の特徴
その他の特徴としては、昔ながらの住宅の特徴に現れると思います。
その一つとして、配管が剥き出しであるということです。
現在の住宅は上水道や排水管などの配管は壁の中に埋められていますが、昔の住宅はそのまま室内を這っているので、見た目が悪いです。

▲むき出しの配管
また、古い住宅なので、浴槽が狭いです。そのため、人によってはお風呂でゆっくり体を休めるということができないかもしれません。
また、前述のように網戸がなかったり、部屋の角という角に隙間が多いため、ゴキブリが現れる可能性が高いということもあります。
これは、一番気にしている方も多いと思います。私も最初の夏はゴキブリが現れましたが、散々対策をした結果、2年目の夏はほとんど現れなくなりました。

まとめ
家賃が安いということはそれだけ欠点が多そうに見えますが、鉄筋コンクリート造に見られるいい点も多くあることが分かります。
古い住宅にもかかわらず、隣人の生活音がほとんど聞こえないというのは、集合住宅に住むにあたってはかなりの利点です。
照明やガスコンロは自分で購入すればいいのであって、網戸も自分で設置すれば問題ありません。夏暑くて冬寒いのは冷暖房器具で調整することができます。
そのあたりを受け入れられる方は、ビレッジハウスは安くて非常にお得な物件と言っていいでしょう。